降圧剤「ディオバン(一般名:バルサルタン)」の5大学の臨床研究で、論文作成にノバルティスの社員(現在は退職)が製薬会社社員の非常勤講師を務めていた大阪市立大学の肩書で統計解析に関与していた問題について、ある大学病院に勤務する内科医は激しい憤りを感じている。
そう思われても仕方がないほど、ノバルティスの対応は、常に後手後手に回ってしまっている。
京都府立医科大学の論文内容に疑義が生じ、国内外の学会誌から撤回された直後、ノバルティスは今年2月の記者会見で、経営陣は「医師主導の治験であったから、ノバルティス側がデータに直接関与することはできなかった」と述べた。
その後、その元社員がデータ解析に関与していた事実が発覚したのは、周知の通り。
加えて、7月11日の京都府立医科大、7月30日の東京慈恵医科大学による調査結果の発表は、元社員がデータ改ざんを行っていたことを強く示唆する内容だった。
折しも、京都府立医大の発表前、6月3日には、ノバルティス側は「データの意図的な操作や改ざんを示す事実はなかった」と発表。慈恵医大発表前日の7月29日でも、第三者機関の調査報告書を発表し、「元社員によるデータの操作があったかどうかを示す証拠はなかった」と強調していた。
その後の両大学の発表内容は、ノバルティス側の認識とは明らかに解離するものである。
特に慈恵医大では「元社員はデータ改ざんについて、否定しているが、明らかに虚偽の証言をしており、信用できない」と断言。世間のノバルティスに対する不信感を増幅する内容だった。残り3大学の調査報告も、ノバルティス側には不利な発表が行われる可能性が高い。
過去の状況をみても、ノバルティスは分が悪い。直属の上司は元社員の仕事内容を把握していた。経営陣も元社員の臨床研究の実績に対し、2010年前後に社長賞を与えている。
「真相究明のためには、努力を惜しまない」――。
7月29日の会見では、ノバルティス ファーマの二之宮義泰社長は、7回以上も発言した。
だが、これまで「証拠がない」と歯切れの悪い発表が繰り返されてきただけに、本気でこの言葉を受け止める人はいない。状況はますます悪化しており、事態は収まる気配がない。
特許切れ後の成長維持戦略が水の泡当然ながら、ノバルティスの日本国内の業績にも大きく影響するだろう。…
0 件のコメント:
コメントを投稿