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<福岡の明太子会社>北海道の廃校をせんべい工場に

2013年8月21日水曜日

 閉校した北海道小清水(こしみず)町の小学校校舎が、せんべい製造工場として生まれ変わった。明太子製造販売の「山口油屋福太郎」(福岡市)が、校舎や校庭の木々、記念碑など子供たちや住民に親しまれていたものを生かして再生した。住民や卒業生らが気軽に立ち寄れるホールも設け、新たな地域の憩いの場として「第二の人生」を歩み始めた。

 きっかけは、同社の山口毅社長(77)が2011年2月に聴いた深夜ラジオ番組。オホーツク海に面した人口約5300人の小清水町のまちおこしイベントで、地元青年有志が特産のジャガイモでんぷんで巨大団子を作り、ギネスに申請する話で「思わず跳び起きた」。

 当時、同社では人気商品の明太子入りせんべい「めんべい」の原料となるでんぷんが品薄だった。「大きな団子を作る余裕があるなら、片栗(かたくり)(でんぷん)もあるはずだ」と、山口社長自ら小清水町を訪れて、町やJAなどと協議を重ね、進出が決まった。

 工場として白羽の矢が立ったのは、少子化に伴い町内の6校を1校に再編するため、12年3月末の閉校が決まっていた旧町立北陽小学校。1996年の建築でまだ新しいうえ、2階建て延べ約2150平方メートルの広さがあり、女満別(めまんべつ)空港につながる国道沿いという立地条件も魅力だった。

 同社は「校舎の楽しい思い出をそのまま残した『温かい工場』にしたい」と計画。外観はほぼそのまま残し、▽校長室や職員室だった場所は売店▽給食室はホール▽中庭はせんべい製造ラインの機械が並ぶ部屋へと一新。最後の在校生16人が描いた絵も室内を飾り、名前も「北陽工場」にして今年6月下旬から操業を始めた。

 従業員30人中、27人を町内や近郊から採用。工場には、近くでパークゴルフを楽しむお年寄りが休憩に立ち寄るほか、かつて通学した子供たちも夏休みに集まってくる。同社は「小清水の活性化とPRに貢献する工場になれば」としている。

 工場では、地元産のジャガイモでんぷんや道産のビート糖、ホタテ貝柱などを使った北海道限定の新製品「ほがじゃ」を製造。ピリッとした辛さとパリパリの歯触りで、林直樹町長も「ビールのつまみに最高」と太鼓判を押す。年間約24億円の売上高を見込んでいる。【山田泰雄

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