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<ドイツ>脱原発 増えるCO2 メルケル政権ジレンマ

2013年8月24日土曜日

 ドイツ西部ケルン郊外の森から白煙が噴き上がる。一瞬、山火事のように見えたが、近付くと天を突くような円筒形の建物が姿を現す。昨年8月、発電効率の良い最新設備が増設されたノイラート褐炭火力発電所だ。落成式では二酸化炭素(CO2)を排出する石炭・褐炭(水分が多く低品質の石炭)依存に反対する環境団体らが付近でデモを繰り広げる中、アルトマイヤー環境相が祝辞を述べた。「石炭、褐炭にはまだ多くの可能性がある」

 2011年3月の東京電力福島第1原発の事故後、22年までの段階的な「脱原発」を決めたドイツ。発電量に占める原子力の割合は減り、逆に風力や太陽光など再生可能エネルギーの割合が増えている。だが原発を減らす分の「穴埋め」として、地球温暖化の原因とされるCO2排出増加につながる石炭依存が進むのも事実だ。

 欧州連合(EU)によると昨年、加盟27カ国(当時)中23カ国が前年比でCO2排出量を減らしたのに対し、ドイツは逆に約640万トンの増加だった。国際会議などでアンゲラ・メルケル首相(59)は世界的な「CO2削減」を訴えるが、ドイツ自身が石炭依存を断ち切れない。米国で新型天然ガス「シェールガス」の生産が拡大していることなどから石炭価格は世界的に下落傾向にあり、「安く買える」利便性も背景にある。

 9月22日の連邦議会選(総選挙)では、脱原発に伴うこうした矛盾解消も争点の一つ。特に熱心に対策の必要性を訴えているのが環境政党・緑の党だ。

 シュレーダー政権(1998〜2005年)で緑の党は社会民主党と連立与党を組み、02年の脱原発法制化を実現させた実績がある。ドイツはその後メルケル政権が一度は原発延長に転じたが、福島事故後に再び脱原発に落ち着いた。だが皮肉なことに、脱原発決定後は緑の党の「存在意義」が有権者に見えにくくなった側面もある。福島事故直後の11年4月の世論調査で一時28%まで上昇した緑の党の支持率は現在、14%前後止まり。そこで今、公約に掲げるのが30年までの電源における「脱・石炭」だ。

 「野心的だが、再生エネルギーのダイナミックな増加率を見れば可能な案だ。(全発電量に占める)再生エネの割合は数年前はわずか10%台だったが、昨年は25%近くまで上昇している。やがては石炭に代わることができる」。緑の党で環境政策に携わるベルベル・ヘーン議員(61)は、再生エネ普及のペースを上げることで石炭の代替は実現可能と分析する。

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