2020年の五輪開催を引き寄せた東京招致団の最終プレゼンテーションは、まさに命運を分けた45分間だったといえる。IOC(国際オリンピック委員会)のジャック・ロゲ会長が「とても印象的だった」と称えたように、身ぶり手ぶりを交えてIOC委員のハートに訴える戦術が奏功したのかもしれない。
高円宮妃久子さまが東日本大震災の各国からの支援に対して、英語とフランス語で感謝の気持ちを述べられた後、パラリンピアンの佐藤真海氏(走り幅跳び)やフェンシングの太田雄貴氏など現役アスリートなども登壇し、慣れないながらも英語でのスピーチは熱を帯びた。
だが、昔から"プレゼン下手"と言われる日本人。中にはオーバーアクションが過ぎてぎこちなく受け取られたスピーカーもいたのでは? そこで、日本大学芸術学部教授でパフォーマンス学のパイオニアである佐藤綾子さんに、今回のプレゼンを評価してもらった。
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――東京の最終プレゼンはどこが良かったか。
佐藤:一人ひとりのプレゼン能力というよりも、チームプレーがもたらした成功だったと思います。適材適所でその人に合う内容を、その人に合うスタイルで喋っていました。例えば、滝川クリステルさんが「おもてなし」の精神を、合掌のポーズで表現しましたね。あのメンバーの中でいちばんソフトなキャラクターだからこそ、相応しい内容と動作だったのです。
――自らの障害や震災の被害を話した佐藤真海選手のスピーチも感動を呼んだ。
佐藤:IOC委員たちの心を開いたのは間違いなく佐藤選手だったでしょうね。でも、その後のプレゼン全体の流れがスムーズにいかなければ、もしかしたらイスタンブールに敗れていたかもしれません。
そういう意味では、トリを務めた竹田(恒和・招致委員会理事長)さんの前に登壇した安倍(晋三)首相のスピーチは決め手になったといえます。安倍さんは「LEGACY」という単語に聴衆を集中させました。これは国民が束になって努力して次の世代に遺産を受け継いでいくという意味。オリンピックは誰か一人のスーパースターの活躍によって次に繋がるものではないという話の論法は、国のトップに相応しいスケールの大きさを感じました。これは他のスピーカーがしてもまったく響きません。
また、懸念された福島第一原発の汚染水問題。安倍さんは心臓のある胸に手を当てながら、東京には一切危険がないことを主張しましたね。あれは「神に誓って」というときに欧米人がよく使う動作。…
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