話題の中心は預金量11兆円を誇る地銀トップバンク、横浜銀行だ。
一つは、8月27日に横浜銀と三井住友信託銀行が発表した業務提携だ。資産運用会社の共同設立と、資産運用や個人向け投資商品の販売での提携に基本合意した。2社は他の地銀との提携拡大も視野に入れているという。
もう一つは、地域経済活性化支援機構が設立したヘルスケアファンドだ。みずほ銀行に加えて大手地銀が共同出資を予定しており、そこに横浜銀も名を連ねた。
少し前であれば、さほど話題にならなかったであろう二つの案件。しかし、そのどちらにも横浜銀が名を連ね、さらに他の地銀が絡むスキームという点に、地銀界は今、特別な意味を見いだしている。
その背景には、"9行連合事件"がある。今年1月、全国の有力地銀9行が地域再生で連携を発表したが、そこに横浜銀の名前がなかったのだ。全国地方銀行協会の会長行を長年務めてきた地銀界の"顔"。その横浜銀が有力地銀の連携を主導できないばかりか、そこから漏れるというのは、彼らのプライドを傷つけた。
そうした状況の中で、横浜銀の名前と地銀連携の話が重なった案件が、2件も立て続けに発表となった。となれば、自然と「9行連合に漏れたことの汚名返上ではないか」(複数の大手行関係者)という発想に結び付くというわけだ。
関東再編の引き金を握るただ、9行連合をはじめとした多くの地銀連携は、中身が伴っていないという指摘にもさらされている。「地銀再編への圧力を強める金融庁の批判をかわす、隠れみのでしかないのではないか」(地銀幹部)といわれる始末だ。
そのため、今回の2件が横浜銀の本当の汚名返上だとは誰も思っていない。遅々として進まない地銀再編こそが横浜銀の狙い、というのが多くの地銀関係者の見方だ。
ある地銀幹部は「関東は再編の台風の目」と見立てる。そして、こう続けた。「横浜が再編を仕掛けた瞬間、均衡が一気に崩れる。常陽銀行や千葉銀行など、関東有力行がドミノ倒しで再編に動かざるをえなくなる」。
「再編が実現するかは結局、人のつながり」。別の地銀幹部がしみじみ語るように、振り返れば今回の案件で培った人脈が、その後の再編につながったといわれる日が来る可能性も考えるほど、地銀界は再編に敏感になっている。…
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