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<ウナギ稚魚>国内上限21.6トンの調整難航 削減合意

2014年9月18日木曜日

 日本と中国などは17日、絶滅が危惧されているニホンウナギについて、養殖のために稚魚を池に入れる量を直近の8割に抑えることで一致した。ルールには強制力がないため、今後は各国・地域の資源管理の実効性も問われる。日本のウナギ養殖業者は小規模経営が大半で、新たな上限の21.6トンをどう配分するかなど国内調整も難航は必至。今回の制限で出荷される親ウナギの量は減り、小売価格の高止まりも続きそうだ。ニホンウナギの本格的な資源回復に向けた課題は山積している。

 ウナギの資源管理をめぐる非公式協議は2012年9月、日本が中国と台湾に呼びかけて3者でスタートした。日本が協議を主導したのは「根本的には最近シラスが非常に不漁で、このままだと養殖業者や消費者が大きな打撃を受けかねないという意識があった」と水産庁幹部は話す。

 ニホンウナギが今年6月に国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定されたことも協議に参加した各国・地域の危機感を強めた。IUCNの判断はワシントン条約で新たに国際取引の規制対象を検討する際の有力な判断材料になるためだ。

 今回の枠組みは、条約などに基づいておらず法的拘束力がないものの、資源回復に向けた一歩前進といえる。水産庁によると、日本は今後、上限21.6トンを都道府県ごとに割り振り、全国で424(昨年時点)ある養殖業者ごとに割り振ることになる。これまでの実績などを基に割当量を決める方針だが、公平性の観点から不満が出る可能性もある。

 6月に成立した内水面漁業振興法で、ウナギの養殖は11月から農水省への届け出制となり、養殖した実績を報告する義務が生じるため、水産庁は全体を把握しやすくなる。

 ただ、ニホンウナギの詳細な生態は分かっておらず、クロマグロのような正確な資源量の把握は難しい。水産庁は、シラスの漁獲量を毎年精査した上で「本当に(削減幅が)2割でいいのか考える必要がある」(漁場資源課)と一層の規制強化に含みを残している。【田口雅士

 ◇小規模養殖業者に打撃も

 国内の養殖業者からは新しい規制への不安の声が上がっている。市町村別で日本一の水産量の愛知県西尾市にある一色うなぎ漁協。山本浩二参事(61)は「稚魚の養殖池への投入量が数十キロと小さな養殖業者が多く、これ以上の減少はきつい」とこぼす。2割削減を進めた場合「苦しくなる業者も出てくるだろう」と危惧する。

 同漁協全体(組合員101人)の今年の稚魚の投入量は計5トン強。

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