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成熟製品でイノベーション!「切れちゃう冷凍」開発秘話 -三菱電機 製品化技術開発部長 平岡利枝【2】

2014年3月19日水曜日

■すべては、素朴な疑問から

そんな私にとって転機になったのは、「切れちゃう冷凍」という新機能の企画・開発の仕事でした。この機能が実際に商品に搭載されてヒットしたことは、その後のキャリアを歩んでいく上での大きな支えになりました。
冷蔵庫というのは成熟製品であるため、新製品の度に新しい機能を付け加えるのがとても大変なんです。そんななか、ブレイクスルーを起こす発想を考えるための研修が社内で開かれ、冷蔵庫の製造部から私がリーダーとして参加したんです。そのとき、どうして主婦の人たちは明日明後日に使おうと思って買ったお肉やお魚を、まずは冷凍庫に入れてしまうんだろうという疑問が出てきました。
そこで製作所の女性を集めてヒヤリングをすると、「凍っていないと使わなかったときに心配だ」という意見が多い。それなら冷凍した食材をすぐに使えるような機能を、冷蔵庫に付けてみたらいいのではないか――そう考えたのが始まりでした。
今から振り返ると、この発想は当時においては女性ならではの視点だったのだな、と思います。
冷蔵庫は家庭の中では感覚的に使われる家電です。でも、開発のプロセスでは本当に細かい数値的な裏付けが必要で、それまでの男性の開発者は繊細過ぎる程に冷蔵庫の機能を追求してきました。例えば、卵にはS・M・Lと大きさがあります。それを入れるケースはどの大きさのものを入れても割れないように設計されている、というように。
S玉を入れるとがたがたする、あるいはL型が入らない冷蔵庫があったら、お客様は怒りますよね? 冷蔵庫に卵がきちんと収まるのはあまりに当たり前のことで、それができたところで感動は生まれません。でも、その当たり前の機能を作り出すのがいかに大変なことなのかを、開発の現場にいると実感します。
■紅一点は、チャンス!
ただ、そうした「当たり前」を実現するためにたくさんの力が注がれる当時の現場では、「冷凍してあるお肉が切れたら便利だよな」といった生活者の素朴な発想がなかなか出てこないものなんです。冷凍庫の温度は低ければ低いほど食材が長持ちするのだから、それを突き詰めるのが技術、という真っ直ぐな考え方が主流になっていくからです。実際に切れる冷凍を提案したとき、「どうして切れることがそんなに大事なの」という感想が多かったのもそのためです。
私が入社した頃はスーパーにも男性がほとんどいませんでした。同じ情報に取り巻かれていても、感じ方はその人の過去の経験や環境によって変わってきます。

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