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NTTが7年ぶりにベア実施 それでも上がる不満の“理由”

2014年3月24日月曜日

「さすがにやる気をなくした」

 社員約10万人を擁するNTTグループ主要8社は、3月12日に春の労使交渉を終え、組合側は平均月額1600円という7年ぶりのベースアップを勝ち取った。にもかかわらず、若手社員からは失望の声が出ている。

 その理由は、ベアの中身をみてみると分かる。  

 まず、昇級は「エキスパート職」と呼ばれる主査や係長など、社員全体の54%にあたる現場のリーダー層に限ったものであること。これが月額1300円。そして、もう一つが子育て世代に対する扶養手当の充実で、月額2800円のアップである。

 とりわけ、若手が肩を落としたのは前者の昇給だ。NTTの経営側は会見で、「(経営計画で掲げたクラウドサービス展開など)新たなチャレンジを担う社員に対しての先行投資」と語ったが、どうやら実態は違う。

というのも、「メインの対象者は、NTT東日本や西日本の50代以降の現場社員」(グループ関係者)だったから。この世代は、NTTが民営化する前の、固定電話全盛期の大量採用組だ。

 NTT東西は、民営化やグループ再編の過程で、合理化の道を歩んできたため、管理職のポストが絞られてきた。

 さらに、固定電話が携帯電話に取って代わられたことにより、求められるサービスも大きく変化。そうした状況に対応できず、ポスト不足で管理職にもなれなかった「エキスパート職」があふれていた。

「組合員として声が大きいのもこの世代」(別の関係者)だというから、実態は〝組合対策〟だったというわけだ。

 裏を返せば、新たなチャレンジを担うべき20~30代の若手社員を始め、独身や子どものいない社員は恩恵にあずかれないことになり、恨み節が出るのも仕方がない話だ。

経団連の副会長決定が契機

 とはいうものの、今回の賃金改定により、主要8社だけでコストアップは年間20億円程度にも上る。

 中でもNTT東西は、競争の激化から主力のフレッツ光の獲得が来年度以降、かなり厳しくなる見通し。そのため、コスト削減の真っ最中で、ベアなどのめる状況ではなかった。

 それが、経団連の副会長にNTTの鵜浦博夫社長が就任することが決まったことで、風向きが変わる。政府の賃上げ要請は強固で、経団連の幹部企業として無視することができなくなったのだ。

 さらに今年は、4年に1度のグループ再編を議論する年。そのため、政府の意向には「逆らわないほうが得策」という考えに傾いた模様だ。

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