週刊ダイヤモンド2月8日号で既報の通り、昨年12月に金融庁が地方銀行の頭取に配った「金融機関の将来にわたる収益構造の分析について」という1枚のペーパーが、再編について「動かざること山のごとし」だった地銀の背中を押そうとしている。
森信親検査局長の肝いりで作られたことから"森ペーパー"とも呼ばれるそのペーパーは、縦軸に各地銀が基盤を置く地域の将来の市場規模の縮小度合いを、横軸に現状の収益性を取ったグラフに、各行の立ち位置が点でプロットされている。右下にいくほど評価が厳しく、再編の可能性が高まる。
競争激化で利ざやの落ち込みに歯止めがかからず、このままではじり貧になることが必至とあり、「もはや再編に向けて頭の体操をしていない頭取はいない」(地銀幹部)といわれる地銀界。だが、足元の経営に不安がある地銀がほとんどないだけに、再編話がとんと進まないのが実態だった。
しかし、森ペーパーによって金融庁が収益性について詳細に分析していることが示された上、それを基に今年1月、畑中龍太郎・金融庁長官が「大変多くの銀行ですでに黄色信号がともっていることがはっきり見て取れる」と明言。さすがに「再編相手の候補を決めて具体的な交渉に動かなければならないときが来た」と腹心に告げる頭取も現れてきた。
当事者以外も動いているただ、地銀に配られた森ペーパーは完全版ではない。個別の行名が入っていないのだ。
将来、経営危機に陥ることを見据えて再編しようというとき、最も重要になるのは、「自分の銀行がのみ込む側であること」(地銀役員)。すなわち、自行が主導権を握ることである。
となると、「間違っても自分より優位なところに声をかけるわけにはいかない」(同)。本来、他行との優位性を比較する指標はほかにもある。
しかし、「今後、森ペーパーが再編を含むあらゆる議論の核となるに違いない」(地銀関係者)ことから、その行名入りペーパーは今、再編を考える地銀にとって喉から手が出るほど欲しいはずだ。
実際、さまざまな金融機関が少しでも正確にペーパーを"復元"しようといそしんでいる。金融庁が用いたデータには未公表のものがある上、金融庁がデータの詳細な算出方法を公表していないこともあり、この数カ月間は、知恵の絞り合いが行われていた。
当事者である地銀だけではない。…
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