塵も積もればなんとやら。
大空を舞う飛行機の総重量も客室乗務員が乗客へのサーヴィスに費やす時間も1回のフライトなら気にならなくても、それが何百便ともなれば積もり積もって膨大な数になります。だから、ほんの少しでも軽くしたいし効率的にしたい。そんなわけでヴァージン・アトランティック航空は軽量化や仕事の効率化のため、1.68億ドル(約170億円)かけて機内食トレイなどのデザインをリニューアルしました。
たかがトレイにそんな大金を投じるなんて変なアイデアに聞こえますが、このアプローチ、考えれば考えるほど理にかなっているんです。詳細は後述するとしてまずは説明を。今回のリニューアルではファーストクラスのアイテムも対象となりましたが、同社が力をいれたのはエコノミークラスの機内食でした。従来の一人前の食事が既にトレイに載っているスタイルから、新たにレストランのように料理ごとに配膳するスタイルに変えるため、同社の幹部はロンドンを拠点にしたデザイン事務所MAPに協力を依頼するに至ったのです。
MAPのデザイナーたちは徹底的なリサーチを行い、食器類からトレイに至るまであらゆるものを改良しました。明るいパープルのカトラリが目立ちますが、ヴァージン・アトランティック社に節約効果をもたらすことになるのは新しくなった機内食トレイなんです(ちなみに機内の食器類は、デザイン変更の幅を狭めてしまう厳格なセキュリティ規則を準拠しなければならないそうです)。トレイのデザインをちょっと変えただけで、同社は温室効果ガスと燃料費を45%も削減できるようになり、今後数年で何百ドルもの節約につながるんだとか。
一つひとつの改良は大したことなくとも、合計していくと同社の機体1機あたり53ポンド(約24kg)の軽量化になるのです。トレイの場合、機内食を料理ごとに配膳するようになれば、何皿も載せるわけではないのでその面積を減らせます。その結果、以前は業界標準のカートの棚1段に3枚のトレイをが収納していたところに4枚収納できるほどにコンパクトになりました。それにともない、各カートに積載できる食事の量が33%増えて、機内に積まれるカートの台数は減ったので、そのぶん機体の総重量は軽くなりました。また、トレイの表面に柔らかなプラスティックのコーティングがほどこしたので、ゴチャゴチャしてかさばる敷き紙は不要になりました。表面が滑りにくくなったことで、離陸時にトレイ上の料理が滑ってこぼれ、客室乗務員が片付ける手間も解消されたのです。…
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