6月11日、仏重電大手アルストムのエネルギー部門をめぐって繰り広げられていた買収合戦に、独重電大手シーメンスと共同で提案を検討すると発表したのだ。
アルストム争奪戦の経緯を振り返ると、米重電大手ゼネラル・エレクトリック(GE)が先行するかたちで、アルストムに対して買収案を提案。その後、仏政府が自国内の雇用やエネルギーセキュリティを守りたいという思惑から、2社の間に横やりを入れる。提案内容をさらにつり上げるために、アルストムがGEの買収案へ回答する期限を延長させ、シーメンスに対案を出すよう促していた。
そして、シーメンスは自社の鉄道事業に現金支払いを加えたものと、アルストムのエネルギー事業を交換するという驚くべき案を模索していたのだ。
エネルギー事業では、GEとシーメンスは世界2強で、アルストムも五指に入る実力の持ち主。鉄道事業では、シーメンスとアルストムは世界の"ビッグ3"と呼ばれる。そんなトッププレイヤーたちが繰り広げる世界再編の渦中へ、三菱重工はシーメンスとコンビを組んで飛び込もうとしているのだ。
規模こそが利益の源泉「細かい分析をしている最中だが、売り上げのパイが広がる影響が大きい」
アルストムのエネルギー事業がGEやシーメンスの手に渡った場合の影響について、その参戦表明前日、事業説明会の壇上に立っていた三菱重工のエネルギー・環境ドメイン長である前川篤副社長は、そう答えていた。「三菱重工と日立製作所が火力事業で統合した(三菱日立パワーシステムズの)ケースと同じ効果が出る」という。
エネルギー事業では、規模を拡大することでコスト削減や利益率のアップを狙う大きな流れの中にある。また、現在アルストムが納入したガスタービンや蒸気タービンなどの機器が手に入れば、利益率が高いメンテナンス事業を手掛けることができる。GEと三菱重工の利益率の差は、これまで納入してきた機器の台数の差が大きな要因の一つとみられているのだ。
こうしたことがアルストム争奪戦の背景の一つであり、三菱重工が参戦した理由でもある。
シーメンスと三菱重工の2社は、5月に製鉄機械事業の統合を発表しており、それに続いて共同戦線を張ることを検討している。
本稿執筆の6月11日時点では、シーメンスと三菱重工による共同提案の詳細は不明だが、6月16日までに正式な提案をアルストムに対してするという。…
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