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<電力小売り>首都圏参入相次ぐ 2.6兆円市場

2014年4月30日水曜日

 2016年の電力小売りの全面自由化を見据え、大手電力や都市ガスなどの業界で首都圏の電力市場参入の動きが相次いでいる。東京電力管内で新たに自由化される2.6兆円の電力小売市場の獲得を見据えているためだ。なかでも、東京電力が今年度実施する600万キロワットの火力発電事業者の入札は、首都圏での発電事業参入の絶好の機会。入札を巡り電力、ガス、石油元売りなど地域や業種を超えた合従連衡が加速している。【安藤大介】

 電力小売りの全面自由化で、これまで電力大手が営業区域ごとに独占していた家庭や商店向け小売市場が開放される。電力、都市ガス各社は、営業区域での販売収益が頭打ちとなるなか、国内電力需要の3割を占める首都圏市場への参入は事業拡大のチャンスとなっている。

 東京ガスは先月末、神戸製鋼所が栃木県に建設する火力発電所から120万キロワットの電力を調達すると発表した。小売り自由化に備え、現在130万キロワットの販売用電力を250万キロワットに倍増する。中部電力は昨年、三菱商事系の電力小売事業者を買収し、首都圏に足場を築き、関西電力も今年4月から子会社を通じて首都圏で電力の小売り事業を始めた。大手商社の丸紅もガス火力発電の運営事業者を今年1月に買収し、発電事業の拡大に意欲的だ。

 ◇石油や商社も

 首都圏のエネルギー争奪の前哨戦として注目を集めているのが、東京電力による火力発電所事業者の入札だ。福島第1原発事故の賠償や廃炉作業を抱える東電は、老朽化した火力発電を建て替える財務余力に乏しく、低コストの新型火力を他社資本で建設する戦略だ。

 東電が4月に実施した入札説明会には、電力、ガス、石油、鉄鋼、商社など計78社が参加。入札に関心を示す各社には「自社の安定的な電源を確保する」(関西電力・八木誠社長)ことで、首都圏の小売り事業の基盤を固める狙いがある。

 すでに応札に向けた提携の動きも表面化している。中国電力と鉄鋼大手JFEホールディングス、東京ガスの3社は、首都圏で火力発電所を共同建設する検討に入った。中国電とJFEは広島、岡山両県のJFE製鉄所で火力発電所を共同運営しており、新たに東京湾岸のJFE製鉄所でも石炭火力を建設する計画だ。

 東電の入札では、安価なシェールガスを使った火力発電も視野に入れていることから、米国のシェールガス輸入事業に参画する大阪ガスや中部電力も参入を検討中。火力発電の実績があるJX日鉱日石エネルギーなど石油大手、燃料調達で強みを持つ商社なども参入を検討しているもようだ。

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