■なぜ日本の会社はiPadを作れなかったか
いま、企業が成功を収めようと思ったら、アップルのiPadのように極めて革新性の強い商品を作り出すか、リッツ・カールトンのように突出したサービスを提供するか、ふたつにひとつしかない。
ところが、日本の会社の多くは、どちらもできずに伸び悩んでいる状況だ。なぜ、そうなってしまったのかといえば、ひとことで言って、効率を追求しすぎたということだろう。
たとえば、私の専門分野である編集の仕事を例にとると、編集者の多くはあまりにも多忙な日々を送っている。短いサイクルで、年間に何冊もの本を出さなくてはならないからだ。
毎週のように企画会議があるが、毎回毎回、新しい企画、面白い企画をひねり出すのは大変だ。そこで、多くの編集者がインターネットを頼ることになる。面白そうな著者はいないか。若者の間で流行しているものは何か。人気の高い著者は誰か……。インターネットは一見、ネタを効率的に収集し効率的に企画を考えるために最適のツールのように思える。
しかし、である。編集者の多くがインターネットを使ってネタを検索するようになってからというもの、企画会議で提案されるアイデアは、ほとんどが似たり寄ったりのものになってしまったのである。世の中が、過度に効率を追求するようになった結果である。
そして皮肉なことに、効率的に儲けようとすればするほど、画一的なものしか生み出せなくなっていき、企業の売り上げも利益も下がっていく。近年の日本の電機メーカーの業績悪化が、その見本だろう。
■非効率こそ結果として効率的
では、どうすればいいのか。参考になるのは、たとえばザッポスの経営だ。ご存じの方も多いと思うが、ザッポスは創業わずか10年目で年間売り上げ1000億円を達成した靴の通販会社である。ザッポスのCEOトニー・シェイの商法は「顧客を熱狂させる」とまで言われているが、その実態は脱マニュアルの経営である。
一般的に電話による注文受け付けの場合、機械的な音声ガイダンスがあり、最後に登場するオペレーターもマニュアル通りの対応しかしない。ところがザッポスにはマニュアルが存在しないのだ。オペレーターは顧客と自由に会話を楽しみ、時には1件の注文を受け付けるのに6時間も費やすことさえあるという。
マニュアルとはまさに、効率を追求するツールの象徴である。誰がやっても、最短の時間で同じ結果が出ることを目的に、マニュアルは作られる。…
いま、企業が成功を収めようと思ったら、アップルのiPadのように極めて革新性の強い商品を作り出すか、リッツ・カールトンのように突出したサービスを提供するか、ふたつにひとつしかない。
ところが、日本の会社の多くは、どちらもできずに伸び悩んでいる状況だ。なぜ、そうなってしまったのかといえば、ひとことで言って、効率を追求しすぎたということだろう。
たとえば、私の専門分野である編集の仕事を例にとると、編集者の多くはあまりにも多忙な日々を送っている。短いサイクルで、年間に何冊もの本を出さなくてはならないからだ。
毎週のように企画会議があるが、毎回毎回、新しい企画、面白い企画をひねり出すのは大変だ。そこで、多くの編集者がインターネットを頼ることになる。面白そうな著者はいないか。若者の間で流行しているものは何か。人気の高い著者は誰か……。インターネットは一見、ネタを効率的に収集し効率的に企画を考えるために最適のツールのように思える。
しかし、である。編集者の多くがインターネットを使ってネタを検索するようになってからというもの、企画会議で提案されるアイデアは、ほとんどが似たり寄ったりのものになってしまったのである。世の中が、過度に効率を追求するようになった結果である。
そして皮肉なことに、効率的に儲けようとすればするほど、画一的なものしか生み出せなくなっていき、企業の売り上げも利益も下がっていく。近年の日本の電機メーカーの業績悪化が、その見本だろう。
■非効率こそ結果として効率的
では、どうすればいいのか。参考になるのは、たとえばザッポスの経営だ。ご存じの方も多いと思うが、ザッポスは創業わずか10年目で年間売り上げ1000億円を達成した靴の通販会社である。ザッポスのCEOトニー・シェイの商法は「顧客を熱狂させる」とまで言われているが、その実態は脱マニュアルの経営である。
一般的に電話による注文受け付けの場合、機械的な音声ガイダンスがあり、最後に登場するオペレーターもマニュアル通りの対応しかしない。ところがザッポスにはマニュアルが存在しないのだ。オペレーターは顧客と自由に会話を楽しみ、時には1件の注文を受け付けるのに6時間も費やすことさえあるという。
マニュアルとはまさに、効率を追求するツールの象徴である。誰がやっても、最短の時間で同じ結果が出ることを目的に、マニュアルは作られる。…
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