ページ

佐村河内氏を叩くメディアは、ゴーストライターだらけだという矛盾

2014年2月27日木曜日

伊吹太歩の時事日想:

 「現代のベートーベン」と呼ばれた作曲家――佐村河内守氏が、実はとんでもないペテン師だったと大きな話題になったのは2014年2月初めのこと。桐朋学園大学の非常勤講師である新垣隆氏が記者会見を開き、「自分がゴーストライターだった」と暴露した。

 だが、新垣氏がほとんどの楽曲を作っていたとされる「ゴーストライター」問題については、そこまで大きな問題のようには思えない。彼が一方的に非難されるのは、少しかわいそうな気もする。というのも、ゴーストライターという存在は、決して珍しくないからだ。

 メディアには、あちこちにゴーストライターがいる。例えば、書籍の世界。偉業を成し遂げたスポーツ選手やビジネスパーソンなどは、文章を上手に書けなかったり、本業が忙しく時間がなかったりという人も多い。だが、需要は高くて売り上げが見込めるため、出版社はゴーストライターを使って本を出す。そして、本を宣伝するためにメディアに登場する著名人は、あたかも自分が書いたかのように振る舞っている。

 これは一般的なビジネス形態だと言える。ただし、米国などでは、こういう形のゴーストライターが「共著者」として本の作者に名を連ねることも多いし、そうでなければ、あとがきなどで紹介される。裏稼業ではなく、1つの仕事として認められている。

 では、今回の佐村河内氏の騒動、海外メディアはどのように捉えているのか。佐村河内氏の楽曲は、「広島」や「東日本大震災」といった海外でも多く取り上げられるキーワードと関連しているため、そこそこ話題になっていた。また、テレビゲーム向けに楽曲を提供したことも取り上げられた。

●ペテン師騒ぎが日本人全体のイメージダウンに

 かつて、佐村河内氏を取材して、彼を「デジタル時代のベートーベン」と世界に紹介した米TIME誌。2001年当時、同誌の米国人記者は、彼を疑わなかった。人々を芸術で感動させている「全聾(ろう)」の人物に会って、そんな疑いを持つことはなかなかできないだろう。

 今回、TIME(電子版)はどう報じているのか。記事タイトルは「聾者の作曲家は実は聾者でないことを認め、自分の曲を書いていなかった」。ソチ冬季五輪開幕前の2014年2月6日付けの記事では、フィギュアスケートの高橋大輔選手が彼の曲に合わせてスケートを滑るYouTubeの動画も埋め込まれている。だが、記事は日本での騒動について簡単に経緯を紹介しただけで、自分たちが彼の世界における知名度アップに貢献したことには触れていない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

 

人気の投稿