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<イスラム債券>実績2年間ゼロ 複雑な手続きネック

2014年2月19日水曜日

 政府がイスラム教の戒律に適合した債券(スクーク)を発行できる制度を整えてから2年が過ぎたが、起債実績がゼロの状態が続いている。イスラム教は実物資産の裏付けがない「利子」を禁止しており、不動産を介するなどして枠組みを工夫する必要がある。通常の社債より手続きが複雑な点や、イスラム圏への理解不足から実を結んでいない。専門家は「欧米市場では主要金融機関が手がけている。海外から日本への投資を促すためにもオイルマネーなどで潤うイスラム投資家を取り込むべきだ」と訴える。

 スクーク債は利子が生じる融資や社債と異なり、実物取引を伴うリースなどの仕組みを応用する。「日本版スクーク」では、発行者があらかじめ必要額に相当する不動産などの実物資産を受託者(特定目的信託、SPT)に移転。発行者はSPTに移した資産を借りてリース料を払う。これを一般的な債券における利子のように扱う。償還時は発行者が資産を買い戻し、その代金が投資家に償還されることになる。

 スクークは、日本の企業や事業に関心があるイスラム投資家の利用が想定されるが、イスラム投資家と投資を受ける日本側双方の制度に関する情報が不十分なことが課題になっている。SMBC日興証券の川端隆史エコノミストは「成長戦略でイスラム資金を呼び込むなら、さまざまな投資家の相談にまとめて答えられる窓口を国が主導して作る必要がある」と指摘する。

 イスラム教徒が多いインドネシアや中東などの新興国の経済成長で、「イスラム金融」は急拡大している。世界のイスラム金融の資産規模は、2012年には06年の3倍以上の1.46兆ドル(約150兆円)に達した。新たな成長分野と意気込む外資系金融大手はほとんど参入しているが、国際協力銀行の吉田悦章氏は「日本の金融機関はどこも国際競争力が低く、そこまで手をまわせないのが現状だ」と指摘している。

【竹地広憲】

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