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TOEIC900点は無意味? 身ぶり手ぶりで学生奮闘〈AERA〉

2013年12月7日土曜日

 多くの企業でニーズが高まっているグローバル人材。これに対応すべく、面白い取り組みを行っている大学がある。

 埼玉県の日本工業大学が今年9月に実施したベトナム研修に参加した学生25人のうち、海外旅行の経験があったのは2人だけ。パスポートすら持っていない学生がほとんどだった。純ジャパニーズの「職人の卵」たちは、もちろん英語も得意なほうではない。

 現地で共同研修をしたダナン工科大学の学生も、英語ネイティブではないという条件は同じ。ダナン外国語大学日本語学科の学生たちが通訳に入り、研修は「日本語」で進められた。

 電子機器組み立て研修では、ストップウオッチ、防犯ブザー、ミニ扇風機各3個ずつをすべていったん解体し、制限時間内に復元する。学生たちは身ぶり手ぶりで技術を伝え合い、グループ作業を着々と進めていった。

 研修を企画した「インターンシップ」代表の尾方僚さんは、この光景を目の当たりにして愕然とした。

「TOEIC900点なんて、現場では意味をもたない。やりたいことが明確で、その能力が海外で求められてこそ、グローバル人材といえるのではないでしょうか」

 尾方さんは外資系企業で採用コンサルタントをしてきた経験から、企業が求める能力や人物像と、学生とのミスマッチを痛感していた。

 海外志向の高い文系の学生が志望するホワイトカラー層はすでに飽和状態。一方、製造業の海外進出によってレベルの高い職人は引く手あまたなのに、彼らは英語力に自信もなければ海外を意識したこともないため、企業から海外勤務を打診されると尻込みしてしまう。

そんな「海外アレルギー」を払拭するため、同大はインド、ベトナムで研修を実施。普段の英語の授業でも、「hammer」など道具の英単語を覚えながら実技も学ぶ「融合科目」を独自に開発した。キャリアデザイン研究室の菊地信一教授はこう話す。

「うちの大学が育てたいのは『現場のプロジェクトリーダー』。自分の技術を海外で使う可能性があると気づくことが重要で、長期留学は必要ない。英語力は単語や片言で通じるレベルで十分です」

※AERA 2013年12月2日号より抜粋

    

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