米金融大手シティグループの日本法人、シティバンク銀行が、個人向け事業の売却に向けて動きだした。関係者によれば、3メガバンクや信託銀行など複数行に打診しているという。
シティ銀は預金量約4兆円と、地方銀行中堅クラスの規模を持ち、外貨預金が多く含まれる。邦銀がこれを手にすれば、海外融資の際に課題となっている外貨調達の面で有利に働くとみられている。しかも、その預金の持ち主は富裕層ときている。投資商品の販売などにも夢が膨らむ。
一見、魅惑の案件に思えるが、シティ銀が売ろうと考えるだけの理由もある。売却対象事業は実質赤字状態に陥っているのだ。さらに、邦銀が買収の検討に当たって懸念している点がもう一つある。「買収後に優良顧客が離れないか」(複数の銀行関係者)だ。
というのも、シティ銀の顧客にとって、シティ銀の手厚い個人向けサービスが魅力なのだ。特に世界200超の国・地域から日本の口座に接続できる、世界的なネットワークは強みだ。また、外資系が得意とする、家族まで丸ごともてなすような富裕層向けサービスや、「シティ」ブランドが決め手という顧客も多いとみられる。
しかし、買収条件によっては、邦銀が今のサービスなどを維持することが難しくなる可能性は大いにある。となれば、優良顧客は他の外資系銀行などに逃げ出しかねない。手に入れた宝箱を開けてみたら、中身が空になっていたというリスクをはらんでいるわけだ。
多くの条件を詰めなければ「優良顧客を素直に価値と見なすのは難しい」(メガバンク関係者)。
そんな中、ある地銀幹部は「信託銀行ならば、買収する銀行と今のシティ銀の顧客、双方にとって意味のあるディールになるかもしれない」と見立てを語る。信託銀行ならば、「通常の銀行で取り扱えない、不動産や相続を扱う信託機能を付加サービスとして提供できる」からだ。これらは、まさに富裕層に適したものといえる。
金融庁は「落胆」一方、監督官庁の金融庁からは複雑な心境が漏れ伝わってくる。2000年代に入って、金融庁はシティ銀に対して、経営体制の不備を理由に3度も行政処分を下してきた。そして、日本人トップを据え、中堅経営層の強化やレポートラインの短縮化などを促し、立て直しに汗をかいた経緯がある。…
0 件のコメント:
コメントを投稿