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<富士通>半導体から撤退 三重と福島の2工場売却へ

2014年7月19日土曜日

 ◇業界再編が一段落

 富士通が国内の半導体2工場を台湾と米国の企業に売却する方向となり、半導体生産から撤退する見通しとなった。1990年代後半以降進められてきた日本の半導体産業の再編が、これで一段落つくことになる。

 システムLSI(大規模集積回路)を生産する三重工場(三重県桑名市)は、台湾の半導体受託製造会社、聯華電子(UMC)と富士通が共同で設立する新会社が運営する方向。富士通は当初、運営会社に7割程度出資するが、他社からも出資を仰ぎ、数年以内に連結対象から外す。

 車載用マイコンなどを生産する会津若松工場(福島県会津若松市)は、米オン・セミコンダクターが富士通の生産子会社に出資し、段階的に出資比率を引き上げる見通しだ。両工場で働く従業員約1500人は新会社などに移り、雇用は維持する。

 富士通は2012年、岩手工場をデンソーに売却するなど半導体の生産部門を徐々に縮小した。13年には「生産部門の分離」を柱とする再編方針を発表、主力の三重工場を台湾の半導体受託製造会社、TSMCに売却する交渉を始めたが条件面で折り合わなかった。一方、パナソニックとは年内にシステムLSIの開発・設計会社を設立、連結対象からは外す。

 日本の半導体メーカーは1980年代後半には、世界シェア5割を握り、世界上位10社のうち日本勢で6社を占める「黄金時代」を築いた。だが日本勢のビジネスモデルは設計・開発から生産まですべて自社で手掛けるもので、世界的に発展した分業化の流れに取り残された。日本の半導体産業は電機メーカーの一部門として発展してきたため、経営判断が遅いという構造にあり、専業メーカーの米インテルや、大規模投資を素早く決断する韓国サムスン電子に後れをとった。

 半導体事業は市況の波が激しいうえ、技術の進歩を取り入れるため年数百億〜数千億円規模の設備投資が必要となる。「単独で製造するのは難しい」(富士通の山本正已社長)状況の中、再編は避けられない流れとなっていた。今回の富士通の生産撤退で国内再編は一区切りつき、今後はITサービスなどの分野でどこまで競争力を発揮できるかに焦点が当たりそうだ。【高橋直純

 ◇半導体業界の再編

 1980年代後半、日系メーカーは世界シェアの半数強を占めていたが、90年代に入ると米インテルなどの専業メーカーや韓国、台湾勢が台頭。90年代後半以降、日系各社の経営は悪化し再編が進んだ。

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