証券代行とは、株主名簿の管理や配当金の支払いなど、発行会社から受託する株式にまつわるあらゆる業務のこと。上場すれば株主数が40万人になるとも50万人になるともいわれ、"巨大発行会社"になること間違いなしの日本郵政のそれは、信託各社にとって垂ぜんの的なのである。
かつては「信託村」といわれるほど各社が親密だった信託業界だが、12年にメガ信託の三井住友信託銀行が誕生したことで蜜月時代は終わりを告げた。同行と三菱UFJ信託銀行が「信託トップの座をめぐってバチバチ戦っている」(信託銀関係者)ほか、銀行、信託、証券の連携を高々と掲げるみずほ信託銀行もシェア拡大を狙う。
今回のコンペも、過去の実績から、この大手3社を有力候補とみる向きが専らだ。証券代行の業務規模を表す管理株主数の多さはトップ2社が圧倒的。みずほには、過去最大の上場案件となった第一生命保険の証券代行を受託している強みがある。「まさに三つどもえ」──。ある信託銀役員はコンペを前に、歯に衣着せずこう語る。
無理もない。発行会社1社につき1信託しか請け負えない証券代行は、ただでさえ「取れるか取れないか」のゼロサムゲームだ。
しかも、いったん委託先を決めると、簡単には変えられない。委託先を変えると、前任の信託銀が取っていた株主属性のデータが通常、見られなくなる上、「どうして変えたのか」と株主から問い合わせが相次ぐため、発行会社に覚悟が必要なのだ。当然、「信託銀にもそうとうなディスカウントが求められる」(信託銀関係者)。
となれば、価格競争は避けられない。「日本郵政を取るのは"名誉"。どこも、ほとんど利幅がないレベルで提案するだろうから、むしろ手数料の勝負にはならない」(信託銀幹部)というくらいだ。
証券代行は、それ自体が差別化しにくい業務なだけに、勝敗は「ゆうパックに顧客を紹介したり、ゆうちょに人を送り込むなど、付帯サービスで決まるのでは」と前出の幹部は予想する。
大手2社の命運を握る「不毛な競争がなくなるかもしれませんよ」(信託銀関係者)。日本郵政上場に伴うこのコンペは、特に信託トップ2社にとってははたから見る以上に大きな意味を持つ。…
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