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川内の審査“合格”で潮目変化 東電、関電 再稼働への皮算用

2014年7月28日月曜日

 毎週、土曜日、平日とは打って変わり閑散とした東京・内幸町で、幾人ものビジネスマンがビルへ吸い込まれていく。

 ここ東京電力本社で、毎週土曜に開かれる会合は、社内でひそかに「糟谷道場」と呼ばれている。経済産業省の糟谷敏秀・総括審議官が、東電の幹部に対して細部にわたるレクチャーや指導を繰り広げるからだ。

 議題は「福島第1原子力発電所の対策」。会合では難航する汚染水や廃炉の問題について、進捗状況の確認と次の対策が検討される。

 東電で原発畑一筋で歩んできた技術者らに対し、電力業界に詳しいとはいえ、一官僚が厳しい指導を繰り広げる様子に、「いよいよ経産の支配下だ」(東電幹部)と嘆く声もある。だが、現在のところは「糟谷さんのおかげで物事が着実に進むようになってきた」と歓迎する声の方が大きい。

 それは糟谷審議官が、原発の規制機関である原子力規制委員会との折衝を一手に担っているからだ。規制委は、福島原発の規制のほか、全国の電力会社から申請された原発の再稼働に向けた審査も行う。

 東電は福島第1の廃炉対策と同様に柏崎刈羽原発の再稼働が重要課題になっている。再稼働の審査を円滑に進めてもらうためには、規制委と良好な関係を保つことが重要なのだ。

値上げラッシュは間近か

 7月16日、規制委は九州電力川内原発の審査書案に"合格"のお墨付きを与えた。

 これを受けて22日には止まっていた柏崎刈羽原発の審査も再開し、道場に通う幹部からは「スピードを上げたい」と意欲を燃やす声が聞こえる。

 川内原発の"合格"に沸いているのは、東電だけではない。現在、国内の原発48基は全て停止中で、電力会社7社が、焦れるように自らの審査の順番を待っている。

 電力会社が再稼働を急ぐのはひとえに、火力発電のたき増しによる赤字から脱却したいからだが、電気料金の再値上げだけは避けたいという焦りもある。

 もっとも、一気に原発再稼働が進むことはない。経産省は各社からの再値上げ申請に備えて、値上げ審査の体制を強化している。

 まず、秋までに申請がありそうなのが北海道電力で、「秒読み段階に入りつつある」(経産省幹部)。

 次に値上げが必要なのが九電だが、川内原発の再稼働が見えてきたことで、「原発を再稼働しておきながらの値上げは、国民感情的に受け入れられない」(同)として、年度内の値上げは回避する見込みだ。

 業界で最も注目されているのは、関西電力だ。

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