それもそのはずだ。わずか3週間前に、日本で"大金星"を収めたばかりだからだ。10月7日、日本航空(JAL)が長距離路線用の中型機として、エアバスのA350型機を大量発注した。31機のカタログ価格は9500億円というビッグディールで、日本の航空市場における勢力図が大きく塗り替わった瞬間だった。
世界の航空機市場は米ボーイング社とエアバスで二分するが、こと日本においてはボーイングが8割超と圧倒的なシェアを握ってきた。戦後の防衛・航空政策など政治的要因と複雑に絡み合っていたためだ。
その一角を崩されただけあって、「取引を勝ち取れなくてがっかり。しかしJALが引き続きビッグカスタマーであることに変わりはない」とボーイングのランディ・ティンゼス マーケティング担当バイス・プレジデントは、落胆の色を隠さない。一方で、「エアバスは、目標数字を洗い出して根拠を示すべき」と早速ジャブを入れることも忘れない。
製造業との関係にも影響ボーイングの強みは「大型機から小型機までそろう商品の豊富さと日本サプライヤー(製造業)とのパートナー関係」(ティンゼス氏)にある。日本からの部品調達は、最新鋭の中型機B787型機では35%に及び、2015年には年間50億ドル(約5000億円)を見込む。
一方のエアバスは日本企業からの部品調達が年間10億ドルにとどまっているものの、「上限を設けるつもりはない」と今後は積極的に増やしていく予定だ。
ボーイング、エアバスの両幹部が口をそろえるのは、「日本では長期的パートナーと見なされないと契約が取りにくい」ということ。とりわけ、後塵を拝してきたエアバスにとって関係の抜本的な再構築が必要だった。
学生時代に1年間、日本にいたこともあるブレジエ氏は、12年6月にエアバスのCEOに就任して以降、日本市場の優先順位を上げ、これまで5回も来日した。さらにJALに納入後もパイロットのトレーニングを提供することなどで受注を勝ち取った。
業界では「JALに大幅なディスカウントをして取った」とささやかれているが、こうしたエアバスの"粘り腰"も見逃せない。
JALからの受注で弾みをつけたエアバスは、日本市場でのシェアについて、「20年には25%、20年後(33年)には5割を目指す」(ブレジエ氏)としている。…
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