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音読で危機を脱した若い編集者

2013年11月25日月曜日

明日から「朝型人間」になる!:

 入社したての若い男性編集者Fさんと打ち合わせをしたときのこと。何だか元気もないし、声もかすれているので風邪でも引いているのかな、と思っていました。打ち合わせが終わり、帰り支度をしている彼に「風邪が早く治るといいですね、お大事に」と声を掛けました。

 すると、ちょっと照れたように頭をかいたあと、急に情けなさそうな顔になり小さな声でこんなことを言うのです。

 「風邪じゃないんです。ちょっと喉を傷めちゃいまして……。1人カラオケで」

 Fさんは見るからに神経質で内向的な文学青年タイプ。その彼が1人カラオケとは、人は見掛けによらないものだと思いました。

 「歌が好きなんですね」

 と、差し触りのない言葉を掛けた私に、彼が一気に話した内容は涙なしでは聞けないストーリーでした。

●カラオケが歌えないと仕事をしてくれない

 Fさんは大学時代、仲間とカラオケに行って歌う経験がほとんどなかったそうです。ところが入社したとたん、歓迎会や飲み会などの2次会で必ずカラオケに連れていかれるそうなのです。これが、内気な彼には地獄の苦しみ。上司に「お前も歌え」と命令されるたび、顔が真っ赤になって歌い、何とか切り抜けてきたそうです。

 ある日、恐れていたことが起きました。

 上司に呼ばれ、近いうちに売れっ子作家の打ち合わせに同行させるが、その作家は大のカラオケ好き。カラオケが下手な編集者は露骨に嫌われるから練習をしておけ、との指示。しかもその作家は、演歌を歌う人が大好きなのだそうです。

 「それで時間を見つけて練習してるんですけど、私が歌っても演歌にならなくて……」

 Fさんは真剣に悩んでいるようです。声がかれているところを見ると、かなりの努力をしているのは分かります。線の細い文学少年が、こぶしのきいた演歌を歌いこなすにはどうしたらいんだろう、と私までが考え込み、ふと音読のことを思い出しました。

 この青年は、まず超えに問題があると気が付いたのです。かつての私と同じように小さな声しか出ていません。それに性格も内気で、万事控えめ。演歌を歌うならもっとずうずうしく堂々と振る舞わなくては……。

 そこで毎朝15分の音読をしてみたら、とアドバイスをしました。「大きな声で音読をすると、腹式呼吸が自然に出てきて音量も増えるし、度胸も付くと思うから」

 彼はキョトンとしていましたが、「やってみます」と小さな声で言って帰っていきまいた。

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