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サントリー、米社巨額買収は「高い買い物」か?世界展開加速へ「時間を買った」勝算と代償

2014年1月21日火曜日

 1月13日、サントリーホールディングス(HD)はバーボンウィスキー「ジムビーム」などで知られる米酒造大手、ビームを買収すると発表した。サントリーHDは1株当たりの買収価格をビームの過去3カ月の平均株価より24%高くした。買収価格の当否を判断する基準として、買収される企業のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)に対する買収金額の倍率がよく使われるが、今回の買収におけるそれは20倍。世界の飲料業界におけるM&A(合併・買収)では10倍強が一般的とされており、サントリーHDはかなり高い買い物をしたといえる。

 買収額1兆6500億円のうち1兆4000億円は三菱東京UFJ銀行からの借り入れにより賄う。サントリーHDは買収金額の8割以上を同行1行のみから調達するが、同行が1つの案件で民間企業に融資する額では過去最高となる。格付投資情報センター(R&I)は1月14日、サントリーHDの発行体格付けを現在の「ダブルAマイナス」から格下げの方向で見直すと発表。日本格付研究所(JCR)も長期見通しを「ネガティブ(弱含み)」に変更。ムーディーズ・ジャパンも同日、発行体格付けを「A3」から引き下げる方向で検討すると発表した。いずれも借入金などの負債が大幅に増えることが理由だ。

 蒸留酒事業は安定的に現金を稼げる。新興国で中間層が増えれば蒸留酒はもっと売れる、との見方が多いが、ビームがサントリーHDの買収提案に乗ったのは"売り時"と考えたからだろう。サントリーはビームの「ジムビーム」などの製品を国内で販売しており、ビームは東南アジアでサントリーHDの商品を販売する提携関係にあるが、サントリーHDは昨年夏頃からビーム買収に向けた本格的な検討を開始しており、その情報が米国の投資家に漏れていた可能性が強いとみられている。

 サントリーの昨年9月末時点での現預金額は6400億円であり、借入金や社債よりも手元にある現金が多い実質無借金であったが、今回の巨額買収で有利子負債が膨脹した。買収がうまくいかなければ借り入れ先の三菱東京銀にも大きなダメージを与えかねないと懸念を指摘する向きもある。

●最後に残った優良案件

 1月13日のニューヨーク株式市場では、ビームの株価は買収価格にさや寄せるかたちで25%高と急騰。米国の著名な投資家が米経済テレビ局の番組に電話出演して、サントリーHDの積極姿勢を高く評価したが、この投資家が率いる運用会社は昨年9月末時点でビーム株全体の2.4%を保有する大株主だった。

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