5月12日、日産自動車は2015年3月期の決算見通しを発表した。大手自動車メーカーの同決算見通し発表としては最後になったのは、14年3月期決算が不本意な結果に終わったからだとみられている。そうした見方をよそに、カルロス・ゴーン社長兼CEOは「世界シェアで過去最高の6.7%を目指す」と宣言し、世界販売台数の目標値を過去最高の565万台(前期比8.9%増)に設定するなど、強気の姿勢を崩していない。ちなみに他の大手メーカーは世界市場の成長率を1~2%増に置いているが、ゴーン氏は「これまでの教訓を生かし強固な予想を打ち当てた。市場環境の急変などがない限り、実現に自信を持っている」と語っている。
このような日産の強気とは裏腹に、同社は13・14年度と2期連続で決算見通しを期中に下方修正しており、市場関係者の間では「ゴーン氏のコミットメント経営が揺らいでいる」(外資系証券会社の自動車担当のアナリスト)という不信が広がりつつある。
日産が強気な理由は、30年ぶりに復活する「ダットサン」の新型車など10車種を新規に投入するからだ。メキシコ、ブラジル、インドネシア、中国などの新工場の稼働も寄与する、としている。同社の15年3月期連結業績の見通しは、売上高が前期比2.9%増の10兆7900億円、営業利益が同7.4%増の5350億円の見込み。国内販売台数は消費増税の反動で11%減の64万台としており、「死守する」としてきた100万台を割り込む見通しだ。
「100万台割れ」は日本の自動車輸出が本格化した1960年代以降で初めてであり、新興国などでの現地生産の拡大に伴い日本からの輸出が減るほか、消費増税で国内販売も減少するとみられているためだ。14年3月期の国内生産台数は前期に比べて5.7%減の100万190台で、今期は90万台規模になる見通し。3期連続で国内生産が減少する。一方、トヨタ自動車は「国内300万台体制死守」の方針を堅持している。
●中期経営計画にも暗雲日産の今期の営業利益見通し(5350億円)は14年3月期の当初予想(6100億円)を1割以上も下回るが、それでもこの目標の達成は簡単ではない。新興国市場は景気の減速が不可避となっているため、トヨタや本田技研工業(ホンダ)などはより慎重な見方をしている。他社に先駆け「ダットサン」などを投入するなど、日産が力を入れているロシアはウクライナ問題で通貨の下落が現実のものになっており、インドも利益を圧迫する要因になる。…
0 件のコメント:
コメントを投稿