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大手製薬の大型海外M&A、なぜ相次ぎ失敗? 問題続出と巨額損失で狂う海外戦略

2014年5月26日月曜日

 武田薬品工業(長谷川閑史社長)のスイス・ナイコメッド買収、第一三共(中山譲治社長)の印ランバクシー・ラボラトリーズ買収が典型例だが、日本の製薬会社による海外M&A(合併・買収)の失敗が相次いでいる。その背景について、事情に詳しいアナリストは次のように解説する。

「日本の製薬会社には目利きがいない。グローバル競争に勝てないから規模拡大のためのM&Aを目指す。そうすると、情報を聞きつけた投資銀行からさまざまなM&A案件が持ち込まれるが、慌てて投資銀行の話に乗っかると、結果的に傷物をつかまされる。さらに、日本の製薬会社にM&Aされた途端に優秀な人材が逃げ出すケースも多い」

 武田は4月8日、糖尿病治療薬アクトスをめぐり米ルイジアナ州ラファイエットの連邦地裁の陪審から、60億ドル(6200億円)の懲罰的な賠償を命じられた。懲罰的賠償とは、陪審が被告に制裁を与えるべきだと判断して課すものだ。裁判を起こした米国の男性は、この薬の投与が原因で膀胱がんを患ったと主張している。それまで米国で製薬企業が支払った賠償最高額は英グラクソ・スミスクラインの30億ドルだったが(12年)、武田の賠償額はその2倍にあたる。アナリストは賠償額が減額になることはほぼ確実とみているが、控訴審で判決が覆る可能性もあり、訴訟の行方は不透明だ。

 同陪審評決は、武田と米製薬大手イーライ・リリーに両社併せて90億ドル(9000億円)という記録的な損害賠償の支払いを命じている。内訳は、武田は前述のとおり60億ドル、イーライ・リリー30億ドルとなっている。しかも、この裁判では「膀胱ががんを発症する可能性があることを示す証拠を両社が隠していた」との疑惑が浮上していた。アクトスは武田薬品が開発し、米国ではイーライ・リリーと共同で販売してきた。日本企業はこれまでも訴訟大国、米国での裁判の対応に苦慮してきたが、訴訟リスクの大きさが武田の判決で改めて浮き彫りになった。

 アクトスは、ピークの07年度には世界で3962億円を売り上げていた。製薬業界では売上高1000億円を超えるヒットを飛ばした医薬品をブロックバスターと呼ぶが、11年に特許が切れるまで武田の屋台骨を支えてきた。

 しかし、次々と特許が切れてブロックバスターを喪失した結果、武田は高収益会社の看板を降ろさざるを得なくなった。この苦況を乗り切るために海外企業のM&Aに踏み切り、M&Aに2兆円もの巨額資金を投じたが成果が思うようについてこない。

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